実は「引退」について、宮野はチームメイトと話をしたことがあった。


宮野はここ最近、チームメイトとよく食事に行っていた。今までももちろん交流はあったのだが、特に宮野が調子を落としてからは、気を使ったチームメイトからの誘いが多くなっていたのだ。

その席で宮野は、ときには愚痴を聞いてもらい、また現状を打開する糸口を求め相談したりもした。チームメイトはみな親身になって話を聞いてくれた。そんな会話の中で何度か「もう引退するしかないのかなあ」などとこぼしたこともあった。


もちろん宮野は本気で考えているわけではなく、話の流れで冗談としてそう言ったのだった。そして冗談だとわかっていてもチームメイトは、「まだ早いよ」と引き留め、さらに「一緒にがんばろう」と励ましてくれた。


しかし今回はその「引退」という二文字がより現実に近づいていると、宮野は感じていた。そうした想いから宮野は、一度真剣に監督と話し合ってみることにした。話し合いの場には球団職員もいた。宮野は自分の考えをぶつけた。


監督は宮野の話をしっかりと受け止めたうえで、引退はまだ早いと引き留めてくれた。そして「あきらめなければ必ず復調する」、さらに「オイスターズにはお前が必要だ」とも言ってくれた。宮野はその「必要だ」という言葉に救われた気持ちとなり、もう少しだけ頑張ってみようと思った。

(つづく)


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