思い切りバットを振った。全力で走った。そしてベースに向かって頭から飛び込んだ。しかし宮野がその両手を精いっぱい伸ばしても、ほんのわずかの差で間に合わなかった。宮野は悔しくて、しばらく立ち上がることができないでいた。

なんとしても勝ちたいと思い声を出し続けた。なんとしても打ちたいと思いバットを振った。なんとしても生きたいと思い一塁へ飛び込んだ。そんな強い思いで臨んだ試合だったからこそ、宮野は今までになかったほどの悔しさを感じていた。


「よくやったぞ宮野!」
「ナイスプレーだ!」


しかしそんな宮野に対し、客席のあちこちから声が上がる。そしてそのすべてが、宮野のプレーを称えるものだった。さらに別のファンからの言葉が宮野の胸に刺さった。


「明日は打ってくれよ!」


そう、宮野がこの試合に引退を賭けて臨んでいたことなどファンは知らない。次の試合に期待するのは当たり前のことだった。この打席の宮野のプレーは、ファンがその期待を大きくするには十分すぎるものだった。


宮野は立ち上がった。その顔は泥にまみれていた。汗と土ぼこりに加え、何か別のものが混じってぐちゃぐちゃであった。そしてその心の中では、いろいろな思いがぐちゃぐちゃに交錯していた。

(つづく)


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